2016年2月2日火曜日

Chypre EDT(1917/1986) by Coty


ミツコ、マ・グリフ、ミスディオール、ロシャス・ファム、ジョリーマダム等など、全てのシプレー系の源流となったフランソワーズ・コティの名作「Chypre(EDT)」を試しました。作家ドロシー・パーカー(Dorothy Parker)愛用の香りで、シプレーをふんだんに体に纏うのでぷんぷん匂っていたみたいです。

1917年発表当時のシプレーは「骨太で不機嫌」だったと、ルカ・トゥリン氏は述べていました。コティのシプレー以前にもAtkinsonsのEnglish Lavender(1799)等シプレー系は存在したのですが、シプレーノートというジャンルを確立してしまうほど、この香りは非常にインパクトがあったのですね。(Novaya ZaryaのChypreは1889年発表という情報、本当なの?)

1960年代コティ社はシプレーの生産を停止し、1986年に再生産しました。(現在は生産中止)こちらはその1986年に再販された「Chateau Collection」のシプレー。これでも、以前のオリジナル版とは匂いが異なるそうです。1986年に再販というと発表された年(第一次世界大戦中)から70年近くたってるんだもの、そりゃそうですよね。

まず、瑞々しいベルガモットや、ふんわりとしたオレンジフラワーが微炭酸めいた上げ潮のように弾けます。少し経ってくるとイランイランと動物香料のシベットが上品に立ち上り、シプレーの主たる香料オークモスの渋味のある深い香りが広がって、ヴィスコンティの映画「ヴェニスに死す」に出てきたような白い海岸の風景が目に浮かんできます。日傘の下に吹き込む冷たくて気持ちの良い風です。(冷たく感じるのはカーネーション?)ジャスミンとアイリスと薔薇が無重力状態で漂っています。何て優雅で何と豊かな香りでしょうか。パウダリーなのでアルデヒドが調合されているのかも? 
ベースに至るのはゆっくりなようでいて早いです。安息香(Styrax benzoin)の匂いがとても穏やか。シベットの他にムスクがあり、そのムスクももしかすると動物性なのか...とよぎりましたが、動物性ムスクの使用は1979年に禁止されたので、それはないんじゃないかと思います。人工ムスクは1888年に、合成ムスクは1930年代には作られています。(ただ、この時のムスクには発ガン性があった)

育ちの良い、紳士淑女の佇まい。

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